こどものスキンケア入門:アレルギー予防のための基本ポイント
現代の医学(皮膚科学)の進歩や、環境汚染・紫外線・空気の乾燥などの環境の変化により、子どものスキンケアの重要性はかつてないほど高まっています。特にアレルギーや皮膚疾患の増加が問題となっている今、乳幼児からの適切なスキンケアは健康な肌を保つためのとても大切です。
なぜ子どものスキンケアが必要なのか、基本的なケア方法、そしてアレルギー予防との関係について詳しく解説していきます。ぜひ、健やかな肌を育むための知識を一緒に学んでいきましょう。
目次
1.スキンケアって何?
スキンケアとは「皮膚の汚れを落として清潔にすること」「保湿して皮膚のバリア機能を補うこと」です。
皮膚の汚れを落として清潔にすること
まずは皮膚についた汗、汚れ、アレルギー物質、細菌などの刺激物を落として、皮膚を清潔する必要があります。皮膚を清潔をすることで、保湿剤や薬の効果を高め、皮膚を健康に保ちやすくします。
保湿して皮膚のバリア機能を補うこと
皮脂、天然保湿因子(アミノ酸など)、角質細胞間脂質(セラミド、脂肪酸なそ)によって皮膚のうるおいは保たれています。これらの因子が減少するとうるおいが不足し、乾燥して皮膚のバリア機能が下がってしまいます。乾燥を防ぐためには、保湿剤は欠かせません。
2.こどもの皮膚の特徴
薄くて柔らかい
こどもの皮膚はおとなに比べて半分ほどの薄さしかなく、とても柔らかいため外部の刺激に対して敏感です。
こどもの皮膚の厚さがおとなと同じくらいになるのは、思春期頃(12歳から16歳)と言われています。そのため、乳幼児期から学童期ごろまではスキンケアはとても大切です。
皮脂の分泌が少ない
生まれてすぐはお母さんのホルモンの影響で、皮脂腺の働きが活発で皮脂がたくさん分泌されています。しかし2~3か月ごろになるとその影響は減り、逆に乾燥しやすくなってしまいます。つやつやの肌に見えますが、乾燥してデリケートです。
バリア機能が未発達
皮膚には「バリア機能」というはたらきが備わっています。しかしこどもの皮膚のバリア機能はまだ完全に発達していないため、外部からの細菌やアレルゲンに対して弱く、皮膚に入り込みやすい状態になってしまいます。
3.スキンケアの基本
皮膚を清潔にする(体を洗う)
皮膚が健康な状態な場合は、毎日石鹸で洗う必要はないともいわれています。しかし、痒みや湿疹などのトラブルがある場合には、皮膚についた汗や汚れ、アレルゲン、皮膚にかゆみを与える細菌(黄色ブドウ球菌)などの刺激物を落として皮膚を清潔にするために石鹸を使って洗います。
- 刺激物、添加物(防腐剤、着色料、香料など)が入っていない石鹸を選ぼう!
- 石鹸は泡立てよう! 汚れは石鹸の泡を使います十分に泡立てていない石鹸で皮膚を洗うと、刺激が強くトラブルのもとになってしまいます。泡タイプのボディソープ、泡立てネットなどのグッズを上手に使いましょう。
- 泡を手に取って、手で体を洗いましょう! 日常生活の汚れは泡で十分に落とすことができます。特に年齢が低いこどもは顔、頭を洗うのを怖がるので洗いにくいかもしれませんがきちんと洗うようにします。指の腹を使って、なでるように肌を洗います。ナイロンタオル、目の粗いタオルで皮膚をゴシゴシ洗うと皮膚を傷つけてしまい、バリア機能を低下させてしまいます。
- 石鹸はしっかり流しましょう! 38~39℃のぬるめのお湯でよくすすぎましょう。熱すぎるお湯は皮膚を乾燥させてしまい、また石鹸の成分が皮膚に残っているとトラブルを起こしやすくなります。
- 体は優しくふく! こすらないように軽く皮膚を押さえながら水分を拭き取ります。ゴシゴシこすると、やわらかくなった皮膚が傷つきやすくなります。
保湿剤を正しく塗る
保湿剤の種類
皮膚の水分が逃げないように”ふた”をするもの(皮膚に浸透しない保護剤):ワセリン
皮膚に浸透して水分を蓄える働きをするもの(皮膚に浸透する保湿剤):ヘパリン類似物質や尿素
保湿剤のタイプと使い分け、選び方
保湿剤にはクリーム、ローション、フォームなどのタイプがあります。季節や時間帯、塗る部位によって使いやすいものを選びましょう。スキンケアは毎日するものなので、使い勝手がいいものを選ぶのが一番です。
特にこどもは保湿剤を「ベタベタするから」と嫌がることも多いです。毎日続けられるように工夫するのも大切です。保湿剤の種類や形状については、かかりつけ医と相談するのもいいでしょう。
市販のものを選ぶときは、着色料、香料など皮膚に刺激を与える可能性のある添加物が入ってないものを選びましょう。
保湿剤の塗り方
保湿剤の塗り方のポイントを押さえるとより効果が得られやすくなります。
- まずは塗る人の手をきれいにします。
- 保湿剤を皮膚にすりこむのではなく、手のひらで広げながら浸透させるように優しく塗り広げましょう。手のひらで温めるように包み込むようにすると、よりなじみがよくなります。
- 保湿剤は薄く塗るのではなく、少し多いと感じる程度に塗りましょう。塗った部分がテカッと光り、ティッシュが張り付く程度が適度な量です。
- 1日2回(朝とお風呂上りなど)以上は塗りましょう。
4.アレルギーとスキンケアの関係
「経皮感作」って?
皮膚を通じてアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が体内に侵入し、免疫系がそのアレルゲンに対して過敏に反応するようになる現象を指します。この結果アレルギー反応が引き起こされるようになってしまいます。
乳幼児期に皮膚のトラブル(湿疹などの皮膚炎)があると、アレルゲンが皮膚を介して体内に侵入し、アレルギー反応を引き起こす抗体を作り出します。その結果、アレルギー疾患にかかりやすくなってしまいます。
家族にアレルギー疾患に人がいたら・・・
アレルギーは家族の遺伝的要因や環境的な要因がとても大きく、特に両親がアレルギーを持っている場合、そのこどものアレルギー発症のリスクは高くなります。アレルギーリスクの高いこどもは成長するにつれて、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などさまざまなアレルギー疾患にかかりやすくなります。
皮膚が清潔に保たれず、バリア機能が低下していると、アレルゲンは皮膚から体の中に侵入しやすくなります。そのため、アレルギーのリスクの高いこどものスキンケアはより重要になってきます。
もちろん家族にアレルギー疾患がないこどもであっても、適切なスキンケアを行うことでアレルゲンへの暴露を予防しアレルギー疾患になることを防ぐことができます。
スキンケアを早い時期から行うことで、アレルゲンへの暴露を減少させ、アレルギー疾患の発症を防ぐことができる可能性があります。
5.まとめ
こどものスキンケアはトラブルを防いで健やかな皮膚を維持することで、アレルギー疾患を予防することに役立ちます。
乳児期から幼児期へ成長してくると、思うようにスキンケアをさせてくれなかったりするようになってきます。成長に合わせて、親がしていたスキンケアから、こどもと一緒にするスキンケア、こどもが自立してスキンケアができる形へ変えていきましょう。
歌を歌ったり、クリームで絵を書いてみたり、こどもが「やりたい」「楽しい」と思ってもらうことが大切です。こどもがすると上手にできないこともありますが、「スキンケア=嫌なもの」だと感じてしまわないように毎日の習慣にしていくことが大切です。