百日咳のワクチンは接種するべき?
当院でDPTワクチン[3種混合ワクチン](トリビック®)の接種希望がある場合は電話での予約をお願いします(Web・LINEでの予約は承っておりません)
結論
接種した方がよいかもしれない
・特に接種するお勧めの方
5-12歳頃の小児*
妊娠している方*とその家族
新生児・乳児の家族
*特に5-6歳(年長)の際にMRワクチン、おたふくワクチンと一緒に接種、11-12歳での2種混合の代わりに3種混合として接種がお勧め。7-10歳ごろは2種混合までの期間が近いため少し推奨度下がる。
*妊娠中は妊娠27~36週ごろの接種が目安、妊娠中のワクチンは産婦人科の主治医にもご相談ください。
そもそも百日咳ワクチンとは?
百日咳ワクチン単独のワクチンはない
そもそも百日咳ワクチン単独のワクチンは現在販売されておりません。
百日咳のワクチンを接種する場合は
百日咳+ジフテリア+破傷風の3つの成分が含有されたDPTワクチン[3種混合ワクチン](トリビック®)になります。
DPTワクチン[3種混合ワクチン](トリビック®)の費用はこちらから
百日咳のワクチンは既に接種していることが多いが・・・
4種混合ワクチン、5種混合ワクチンなどのワクチンは2歳までの定期接種で4回接種していることが多く、こちらに百日咳も含まれています。
接種したワクチンの効果は年齢とともに低下するため、海外では繰り返し接種するような推奨となっております。
また、日本小児科学会も5−6歳、11-12歳の3種混合ワクチンの任意接種を推奨しております。

(注)11歳以降は米国ではTdapワクチン(本邦未承認)
日本においての百日咳の報告でもワクチンを接種していても小学生以下を中心に幅広い世代で報告されており、定期接種でワクチン受けているから大丈夫!とはいえません。
以下は2022年のデータ[百日咳症例の年齢分布と予防接種歴(2022年第1週~第52週(診断週)]
参照:https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/pertussis/010/index.html

日本と海外のワクチンの違い
11歳以上はTdapワクチンが主流
DPTワクチン(3種混合ワクチン)は成人に接種すると注射部位の痛みなどの副反応が出やすいことが知られています
百日咳+ジフテリア+破傷風の成分を減らして(特に百日咳とジフテリア)副反応を減らしたものがTdapワクチンとなります
DPT(3種混合ワクチン) vs Tdapワクチン
DPT(3種混合ワクチン)とTdapワクチンの比較は以下の通りです

結局DPTワクチンとTdapワクチンどちらを打つべき?
データの豊富さを考えれば11歳以上はTdapワクチンなのですが、個人的にはDPTワクチンを接種するべきだと思います
日本で承認されたDPTワクチンであれば万が一重篤な副作用が出た場合はPMDA(医薬品医療機器総合機構)による救済制度の対象となりますが、承認されてないTdapワクチンに関してはこの救済制度が使えないからです
当院では副作用に対しての診察や相談であればいくらでも対応いたしますが、万が一重篤な副作用が出現した場合の就業不能となった場合の経済的な面までは責任を持てません。無責任な医療を行いたくないという思いから、当院では承認外医薬品の投与は原則行なっておりません。
百日咳は重症となることがある
予防接種の普及とともに死者数は激減しましたが、世界では1年で16万人の5歳未満小児が死亡している推計されています
日本でも先日、1ヶ月の女児が百日咳により死亡したという悲しいニュースがありました
特に生後6ヶ月未満で重症化リスクが高いとされ、今回のニュースのようにワクチン接種開始前の生後2ヶ月ごろまでに感染した場合には非常に注意が必要です
だからこそ
- 生後2ヶ月からの定期接種は必ず接種する
- 妊娠中にワクチン接種することで免疫力を胎児に移行させる
- 乳児の家族がワクチンを接種することで百日咳をうつさない
といった対策が重要となります。
百日咳の流行について
特に百日咳は4〜5年周期で流行が起こることが多く
インフルエンザなどの他の感染症に比べると流行期間が長く3ヶ月〜12ヶ月程度流行することが多いです
またワクチンの効果は接種後数週程度でピークとなり徐々に効果が低下するため
百日咳が流行してきたからワクチンを接種するという戦略は理にかなっているとも考えられます(皆が一斉に接種すると供給不足になるため大きな声では言えませんが)
まとめ
- 5-12歳の小児、妊婦、妊婦や新生児/乳児家族では百日咳のワクチンを接種した方が良い「かもしれない」
- 「かもしれない」のはデータが少ないから
- 百日咳の流行時に接種する場合には、より推奨度が上がる
- 百日咳のワクチンは現状はTdapよりもDPTワクチン(3種混合ワクチン)がお勧めだが、日本でも承認されたら11歳以上はTdap推奨
参照
- An update of the global burden of pertussis in children younger than 5 years: a modelling study(Lancet Infect Dis . 2017 Sep;17(9):974-980.)
- WHO (https://www.who.int/health-topics/pertussis?utm_source=chatgpt.com#tab=tab_1)
- JIHS 感染症情報提供サイト(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/article/pertussis/010/index.html)
- 毎日新聞[「百日ぜき」生後1カ月女児が死亡 耐性菌に感染、基礎疾患なし](https://mainichi.jp/articles/20250418/k00/00m/040/324000c)
- Up to date [Immunizations during pregnancy][Pertussis infection in adolescents and adults: Treatment and prevention]
- 日本小児科学会 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点 2024年10月27日版(https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20241114_vaccine_schedule.pdf)