皮膚科疾患(皮脂欠乏性湿疹、蕁麻疹、接触性皮膚炎、褥瘡など)

皮膚欠乏性湿疹

皮脂欠乏性湿疹は乾燥などで皮脂の量が減り、肌のバリア機能が低下して角質がはがれやすくなった状態のことをいいます。

症状

皮膚の表面がガサガサしたり、白い粉をふいたようになったり、ひび割れや痛み、かゆみながみられます。

最初は症状が軽くても、放っておくと症状の範囲が広がったり、皮膚の表面が傷つくことで細菌がつきやすく感染を起こしやすい状態になります。慢性化することで症状は治りにくくなり、治療に時間がかかってしまいます。さらに強いかゆみで睡眠不足になったり、集中できなくなったりと、社会生活に影響を及ぼすこともあります。

治療方法

保湿を十分に行い、乾燥を防ぐことが大切です

  • 十分な保湿を行って、皮膚の水分を保ってあげることが大切です。保湿剤は少なくとも1日2回以上は使用しましょう。保湿剤にはさまざまな種類のものがありますが、ヘパリン類似物質やセラミド入りのものがおすすめです。ローションなどの軽い使用感のものから、泡タイプ、クリームなどのしっとりしたタイプもあるので、季節、乾燥の程度、部位などに対して使用感が合うものを選んでいきます。
  • 乾燥した環境をさけるために、適切な室温や湿度を保ちましょう。室温は20~22℃、湿度は40~60%が多くの人にとって快適で皮膚が過度に乾燥をすることを防ぐと言われています。お風呂やシャワーは37~40℃程度のぬるめのお湯、ボディソープやシャンプーは十分泡立てて優しく洗うと、皮脂を過剰に失わずにすみます。

炎症やかゆみが強い場合は保湿剤のみでは治りにくいことがあるので、ステロイド剤を用いる場合があります。医師の指示に従い正しく使用すれば、副作用のリスクはほとんどありません。

特に乾燥の強い秋~冬はトラブルが起きやすくなります。気軽にご相談ください。

蕁麻疹

皮膚に現れた赤みのある腫れやかゆみをもつ発疹のことをいいます。アレルギー反応、物理的な刺激(圧力や温度の変化)、特定の食品や薬、ストレスなどのさまざまな要因が蕁麻疹を引き起こします。

蕁麻疹の特徴

  1. 赤い発疹や腫れ:皮膚に赤い斑点や腫れ分が現れるのが最も一般的な特徴です。強いかゆみを伴うことが多く日常的生活に影響を与えることもあります。
  2. 形状とサイズの変化:発疹や腫れは時間の経過とともに形やサイズが変わることがあります。数時間から1日で消えることもあれば、新しいものが出現することもあります。
  3. 可動性があり一時的:体の一部分のみではなく、異なる場所に現れたり消えたりします。また、症状は一時的で通常は数日から数週間で自然に解消します。

対処方法

一般的な対処法としては以下の通りです。

  1. 冷やす:腫れやかゆみを和らげるために患部を冷やします。これは血管を収縮させて症状が軽減させることで、かゆみのために皮膚を掻いてしまうことによる症状の悪化、皮膚のトラブルを避けることができます。
  2. 適切な薬の使用:抗ヒスタミ薬はかゆみを和らげ、症状を軽減するのに役立ちます。ただし眠気がでるなどの副作用があるため、不安な場合は医師に相談して処方してもらいましょう。
  3. トリガーの回避:蕁麻疹の発生原因が特定できる場合は、そのトリガーを避けることが重要です。例えば、特定の食品、薬物、ストレスなどです。
  4. 緩やかな衣服の着用:緩やかで通気性の良い衣服を着用することで、皮膚への刺激を最小限に抑えることができます。

蕁麻疹の症状が出たときに呼吸困難、のどの腫れ、意識の変化などの重篤な症状がある場合は、緊急の医療機関を受診しましょう。

慢性蕁麻疹について

繰り返し蕁麻疹が発生する場合、慢性蕁麻疹の可能性を考える必要があります。慢性蕁麻疹とは、症状が6週間以上続く場合に診断されます。

慢性蕁麻疹の場合、特に原因が明確でないときは症状の管理と潜在的な原因の特定に焦点を当てた治療が必要となります。

繰り返し発生する蕁麻疹を放置することは、潜在的な原因や他の健康問題を見逃すリスクがあるため、医療機関での診断を受けることが重要です。

接触性皮膚炎

皮膚が何らかの物質に触れることによって引き起こされる炎症の一種です。接触性皮膚炎には2つのタイプがあります。

接触性かアレルギー性か

  1. 刺激性接触性皮膚炎:最も一般的なタイプで、皮膚が刺激物質に直接触れることで発生します。刺激物質にはさまざまなものがあり、日常的に使用する石鹸や洗剤、美容製品(化粧品、ヘアケア製品、ネイル)をはじめ、化学薬品、金属、植物など原因はさまざまです。
  2. アレルギー性接触性皮膚炎:このタイプはある日突然、特定の物質に対してアレルギー反応を現れるます。これは、長年にわたりある物質に直接触れる、またはその物質にさらされることにより、免疫がその物質に対して過敏になり、反応するようになってしまいます。

おもな症状

赤み、かゆみ、びらん、水ぶくれ、腫れなどがあります

対処と治療方法

  1. 原因物質との接触を避ける:原因と思われる物質を避けます
  2. 皮膚の保湿: 乾燥した皮膚は傷つきやすく炎症を悪化させる可能性があるため、保湿剤を使用して皮膚を柔らかく保ちます。
  3. 外用薬の使用:赤みやかゆみを抑えてくれ、皮膚の炎症の悪化を防いでくれます
  4. 内服薬の使用:抗ヒスタミン薬を内服することでかゆみを軽減させます
  5. 冷やす: 炎症やかゆみを和らげるために患部を冷やすとかゆみが抑えられます

判断に迷う場合は、症状が慢性化しないうちに早めに医療機関を受診しましょう。

褥瘡(床ずれ)

私たちは無意識のうちに寝返りをうったり、お尻を浮かせるなどして、同じ部位に長い時間の圧迫が加わらないようにしています。

褥瘡は長時間同じ姿勢を続けることで皮膚やその下の組織が圧迫され、皮膚や組織の細胞に十分な酸素や栄養がいきわたらなくなることによって生じる皮膚の損傷のことです。高齢者や長期間の療養が必要な方に多く見られ、早期発見と適切なケアが非常に重要です。

原因とリスク

  • 長時間の圧迫による血流不足
  • 栄養状態の不良
  • 皮膚の湿潤や摩擦
  • 糖尿病などの基礎疾患

症状

  • 赤み、熱感、腫れ
  • 皮膚の硬化や痛み
  • 進行すると潰瘍や壊死を伴う

褥瘡の好発部位

褥瘡の見分け方

褥瘡は皮膚およびその下の組織の損傷の程度でステージ1~4の4段階で分類されます。それぞれのステージにおける特徴を理解することで、褥瘡の状態を見極めることができます。

  • ステージ1: 皮膚の損傷はないが赤みがあり、圧迫部位を指で押しても赤みが消えない
  • ステージ2: 皮膚の表皮(最も外側の層)または真皮(表皮の下の層)に損傷がある。
  • ステージ3: 皮膚の損傷が皮下組織(脂肪組織を含む)まで達している。
  • ステージ4: 皮膚および皮下組織の損傷が筋肉、骨、または(腱や関節などにまで及んでいる。

ステージ1~2の初期段階では合併症のリスクは比較的低いです。ステージ3以降になると感染のリスクが大きくなり、治癒するには長い期間と専門的なケアが必要です。局所のみでなく全身に感染の症状が及ぶと重篤な状態に陥ってしまいます。

特にステージ1はごく初期の褥瘡であるため早期に対処すれば回復も早くなります。発見したらすぐに医療機関に相談しましょう。

予防とケアの重要性

  • 定期的な体位変換: 長時間の同じ体位を避け、同じ部位への圧迫を避ける。
  • 適切なサポートとクッショニング: 圧力分散を助けるマットレスやクッションを使用する。
  • スキンケア: 皮膚の乾燥や湿潤を防ぎ、適切な清潔さを保つ。
  • 栄養、水分管理: 健康な皮膚を維持するために十分な栄養と水分の管理を行う。

合併症のリスクを最小限に抑えるためには、褥瘡の早期発見と適切な治療が重要です。