起立性調節障害(OD)
目次
・問診、身体診察
・新起立試験
・ゆっくりと立ち上がる
・水分をしっかりとる
・頭を起こす
・散歩する
・決まった時間に起きる
・キツめのタイツを履く、ベルトを絞める
・塩分を少し多めにとる
・新起立試験の手順
・新起立試験の判定
1.起立性調節障害とは?
身体全体のバランスを調節する自律神経機能の低下が原因で起こる病気です。
1.朝起きられない
2.身体がだるい
3.気分が悪く遅刻や欠席を繰り返す
そんな子供の半分くらいが起立性調節障害(OD)という病気の可能性があるといわれています。
2.起立性調節障害の症状
以下のうち3つ以上満たす場合には起立性調節障害を疑い、後述する新起立試験を行います。
- 立ちくらみ、めまいを起こしやすい
- 立っていると気持ち悪くなったり、倒れてしまうことがある
- 入浴時や嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
- 少し動くと動悸や息切れがする
- 朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
- 顔色が青白い
- 食欲不振
- 強い腹痛(臍仙痛)が時々ある
- だるさ、疲れやすさがある
- 頭痛がある
- 乗り物に酔いやすい
3.なぜこのような症状が起きるのか?
寝ている状態から起き上がると脳への血流は重力により一時的に低下します。
健康な方では自律神経の働きですぐに脳への血流が回復します。
しかし起立性調節障害では自律神経の働きが弱いため脳の血流が戻りにくく、立ちくらみやふらつきなどの症状が現れます。
4.受診後の流れ
受診の際には、以下の手順で診察をすすめていきます。
問診・身体検査
自覚症状や経過、生活にどのような支障が出ているかなどを問診で確認します。
貧血や不整脈など他の病気との鑑別のため、身体診察や採血検査、心電図検査などを行います。
新起立試験の実施
起立性調節障害が疑われた場合は新起立試験を行います。
起立性調節障害の種類や重症度などを判定し治療方針を決定していきます。
5.日常生活の注意点
日常生活では以下のようなことに気をつけます。
ゆっくりと立ち上がる
ふらついて転んだりしないようにゆっくりと立ち上がることが大切です。
まずは頭を下げて深くお辞儀をするように下半身のみ立ち上がります。
膝に手を添えながらゆっくりと上半身をあげるように立ち上がります。
水分をしっかりとる
血液の9割は水分でできており、脳への血流を維持するためは水分を十分にとることが必要です。
目安として1日1.5~2L程度とるように気をつけます。
頭をおこす
できる限り頭を上げておくことで、少しずつ頭の血流を増やす練習をすることが大切です。
朝起きたら活動するのは難しくても、座った姿勢でいる時間を徐々に増やすことが大切です。
散歩する
散歩をすることで、自律神経のバランスが整いやすくなります。
最初は歩ける範囲で無理せず行いましょう。
慣れてきたら徐々に歩く時間を長くして1日1時間(約7000歩)を目指しましょう。
決まった時間に起きる
起立性調節障害では朝起きるのが辛いため、起きるのが遅くなり昼夜逆転しやすくなります。
朝起きたらカーテンを開けて部屋を明るくし、無理に活動しなくても良いので決まった時間に起きましょう。
キツめのタイツを履く、ベルトを絞める
着圧ストッキングを履いたり、ベルトをキツめに絞めることも有用です。
立ち上がった際に血液が下半身に落ちてこないようにすることで、脳への血流が維持されやすくなります。
塩分を少し多めにとる
血圧が普段から低めの方は塩分を少し多めにとると良いです。
具体的には1日10~12g、普段の食事より3g程度多くとりましょう。
6.新起立試験とは
安静にした後、急激に立ち上がった際に
- 血圧が下がった後に直ぐに戻るか
- 立ち上がって徐々に血圧が下がってこないか
- 立ち上がって意識がもうろうとしてこないか
- 立ち上がって心拍数が早すぎないか
を確認します。
新起立試験の手順
- 朝8時に当院を受診します
- クリニックのベッド仰向けで10分間過ごします。安静時の心電図、血圧を測ります。
- 両腕に血圧計を巻いたまま看護師の合図とともに自分で起き上がり、ベッドの横に立ちます。
- 片腕で立ち上がった後に血圧が回復するまでの時間を聴診します。もう片腕では10分間、1分毎に血圧、脈拍数を測ります。
- 検査を終えたら医師の診察があります。
新起立試験の判定
起立性調節障害は新起立試験の結果で以下の4つのタイプに分けられ、タイプによって使う薬が異なります。
判定方法 | |
起立直後低血圧 | 立ち上がった直後から血圧が戻るまで25秒以上かかる |
遷延性起立性低血圧 | 立ち上がって3~10分の血圧低下あり(15%以上または20mmHg以上) |
体位性頻脈症候群 | 立ち上がった時の心拍数が早い(心拍数115bpm以上または心拍増加35bpm以上) |
血管迷走神経性失神 | 立ち上がった際に血圧が下がって意識がもうろうとする |
7.まとめ
起立性調節障害は病気であり、『怠け』とは違います。
根性でどうにかなるものではなく、家族や学校職員など周囲の理解とサポートが大切です。
思い当たる症状、ご不安を抱えている場合は遠慮なくご相談ください。