おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
1.おたふくかぜとは?
正式名を流行性耳下腺炎といい、ムンプスウィルスによる感染症です。
ウイルス感染は細菌感染とは違い『抗菌薬(抗生物質)が効かない』のが特徴です。
2〜9歳程度の小児の感染が多いですが、大人でも感染します。
高齢で感染するほど重症化リスクが高いと考えられており、注意が必要です。

2.感染経路と潜伏期間は?
- 感染経路
・咳やくしゃみなどの飛沫
・ウイルスのついた手指や物からの接触 - 潜伏期間
感染してから症状が出るまで約2~3週間
ウイルスに感染しても3人に1人は無症状とされておりますが、無症状でも人に感染させる可能性があります。 - 人にうつしやすい時期
症状が出る直前~発症5日が特に人にうつしやすい
発症5日以降はウイルスの出る量がかなり減る
3.主な症状
- 耳の下(耳下腺)が腫れて痛い[片側or両側どちらのこともある]
- 発熱
- 食欲がない、だるい
- 頭痛
- 筋肉痛
耳の下の腫れは1週間ほどで自然にひくことが多いです
小児期の感染ほど軽症で発熱などの症状が伴いにくいです
4.合併症について
精巣炎
- 高熱(39~41度)や精巣の痛みが特徴的
- 入院を要することが多い
- 思春期以降の男性の15~30%に生じる
- おたふく風邪を発症してから5日前後してから発症することが多い
卵巣炎
- 下腹部痛や発熱、嘔吐などが出現する
- 思春期以降の女性の5%に生じる
髄膜炎
- 頭痛、微熱、首の前後の動かしにくさなどが出現する
- 1~10%に生じるとされる
- 耳の下の痛み(耳下腺炎)がなくても生じる
難聴
- 一時的なものから一生続くものもある
- 片耳も両耳もあり、めまいも合併する報告もあります
その他合併症
- 膵炎
- 関節炎
- 心筋炎
- 甲状腺炎
- 間質性腎炎など
5.妊娠とおたふく風邪
- 妊娠初期にかかると流産のリスクが少し上昇します
- ただし、奇形や重い後遺症との関連は明確ではない
- 妊婦さんはなるべく感染を避けることが大切
6.治療について
- おたふくかぜには特効薬はありません
- 症状に応じた対症療法が基本
発熱→解熱鎮痛薬
腫れや痛み→冷やす、温める、解熱鎮痛薬 - 多くの場合1~2週間以内に自然に回復します
- 登園・登校は「耳下腺の腫れが出てから5日が過ぎ、全身状態が良ければ」可能です(学校保健安全法)
7.ワクチンによる予防
おたふくかぜはワクチンで予防可能です
- ワクチン1回で 約8割の人が発症を防げる
- 2回接種するとさらに効果が高まる
- 日本では任意接種(自己負担)ですが、海外では定期接種が主流
- 合併症を防ぐためにも ワクチン接種を強くおすすめします
8.まとめ
- おたふくかぜは耳下腺が腫れるウイルス性の病気です
- 多くは自然に治りますが、髄膜炎・精巣炎・難聴など合併症に注意が必要です
- 妊婦さんは特に注意が必要です
- ワクチンで予防できるため、未接種の方はご相談ください
予防接種の費用はこちら
参考文献
- Hviid A, Rubin S, Mühlemann K. Mumps. The Lancet. 2008;371(9616):932–944.
- Nguyen HQ, et al. Mumps Virus: Virology, Epidemiology, Clinical Features, Diagnosis, and Prevention. Clinical Microbiology Reviews. 2020;33(2):e00151-19.
- Rubin S, et al. Mumps virus: Biology and Immunity. Frontiers in Immunology. 2021;12:626730.
- Galazka AM, et al. Mumps and its prevention. Medicine (Baltimore). 2010;89(2):96–116.
- UpToDate. Mumps: Clinical manifestations, diagnosis, treatment, and prevention. UpToDate Inc.(最終アクセス日: 2025年8月)