バセドウ病
目次
1.バセドウ病とは?
2.バセドウ病を疑ったらどうするか?
3.バセドウ病の治療の流れ
・治療前の確認事項
・治療方法は?
・治療期間中の流れは?
・治療はいつまで行うか?
4.副作用について
・重度の副作用
・軽度の副作用
5.注意すべき生活習慣とは?
6.まとめ
1.バセドウ病とは?
免疫機能の異常により甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
過剰になった甲状腺ホルモンや免疫機能の異常により、以下のような症状が出ることがあります。
- 脈が早い、体重が減る、手が震える、汗をかきやすい
- 全体的に甲状腺が腫れている
- 眼が飛び出ている
2.バセドウ病を疑ったらどうするか?
前述した症状のいずれかと検査での異常を認めることで診断します。
バセドウ病での検査(採血検査)
バセドウ病の診断には以下の1~3を全て満たすかを確認します。
- 甲状腺ホルモン値が高い(FT3,FT4のどちらかまたは両方高値)
- 甲状腺ホルモン分泌を促進するホルモンが低い(TSH低値(0.1μ/mL以下))
- 自己免疫機能の異常がある(TSH受容体抗体(TRAb,TBII)陽性、または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性)
3.バセドウ病の治療の流れ
治療前の確認事項
- 妊娠中または近いうちに妊娠予定があるか
→あれば専門医に紹介 - 以前の治療歴、治療期間について
→難治例であれば専門医に相談を考慮
治療方法は?
- チアマゾール(メルカゾール®︎)という薬を甲状腺ホルモンの値に合わせて1日1~3回で投与
- 中等症〜重症のバセドウ病の場合はヨウ素カリウム丸50mgを併用
- 副作用確認のために治療開始後約2~3ヶ月は2週間おきに採血検査を行います。
治療期間中の流れは?
- 甲状腺ホルモンの値が正常になるまでは2~6週間隔で採血検査
- 甲状腺ホルモンの値が正常範囲になったら4~6週間隔で採血検査
- 甲状腺ホルモンの値が十分に正常化したらチアマゾール(メルカゾール®︎)を減量する
- チアマゾール(メルカゾール®︎)が最小投与量まで下がったらこれを維持量として2~3ヶ月ごとに採血検査
治療はいつまで行うか?
- 最小量のチアマゾール(メルカゾール®︎)を6ヶ月以上内服し、甲状腺機能が正常を維持していたら中止考慮
- チアマゾール(メルカゾール®︎)中止後6ヶ月は2~3ヶ月おきに採血検査、その後は徐々に間隔を伸ばし1年以降は6~12ヶ月おきに採血検査を行う
4.副作用について
チアマゾール(メルカゾール®︎)の副作用の発症時期は使用開始後3ヶ月までにほとんどがみられます。
重度の副作用のうち無顆粒球証、重症肝障害、MPO-ANCA関連血管炎症候群では死亡例も報告されており注意が必要です。
一部の副作用(ANCA関連血管炎)は1年以上経過してから発症しやすいと言われます。
重度の副作用
- 無顆粒球証:典型的な症状としては38度以上の発熱と重篤な咽頭炎症状をきたす。
- 肝障害:重度の肝障害になると黄疸が出現することもある。
- ANCA関連血管炎:血尿、喀血、呼吸困難感、紫斑、関節痛など様々な症状をきたす。
軽度の副作用
- 皮疹:掻痒感や皮疹が出現することがあり、痒み止めの薬を追加することで改善することが多い。改善しない場合には他の薬に変更することもある。
5.注意すべき生活習慣
禁煙
バセドウ病では喫煙により以下のリスクがあるため、禁煙が必要です。
- バセドウ病の発症リスク増加
- 甲状腺眼症の発症リスク増加
- 治療に対する抵抗性増加
- バセドウ病の再発リスク上昇
精神的・身体的ストレスを溜めない
バセドウ病では以下のような様々なストレスにより増悪するため、ストレス回避や軽減が必要です。
- 感染症
- 外傷
- 手術
- 激しい運動
- 精神的ストレス
まとめ
バセドウ病は無治療や治療が不十分だと複数の臓器の機能が低下し最悪の場合死に至ることもあります。
定期的な通院を行い、薬の内服・副作用の出現に注意することが大切です。
参考文献
- バセドウ病治療ガイドライン2019
- かかりつけ医のための甲状腺疾患治療ガイド